禁酒・断酒

薬丸岳「告解」の感想。飲酒運転の怖さと贖罪について考えさせられた小説

 

小説「告解」

  • 文庫本タイトル:「告解」
  • 出版社:講談社文庫
  • 出版日:2022年8月10日
  • ページ数:376ページ
  • 価格:760円(税別)
  • 著者:薬丸 岳 (1969年兵庫県生まれ)

 

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小説「告解」レビュー(ネタバレ注意)

小説『告解』

 

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あらすじ

小説「告解」の表紙

一流大学に通う20歳の主人公は、酒に酔っているのに軽い気持ちで車の運転をしてしまいます。

深夜の雨中、飲酒運転で年配女性を轢き、その自覚があったのに怖くなってそのまま逃走してしまいますが、結局、逮捕され懲役4年10カ月の実刑判決。

「人生これから」という大人のスタートを切ったばかりの二十歳の青年とその家族、恋人、遺族の人生を狂わせた事件発生後の10年間を描いた過酷なストーリーです。

 

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感想

小説「告解」の背表紙

主人公は、出所後も遺族との関係が続き、待遇がいいとは言えない職を転々としながら日々の生活に苦しみ続けます。

こういう事件を起こすと、被害者遺族のみならず自分の家族もそれまでの平穏の日々から暗闇の日々に突然突き落とされてしまう怖さが書き表されています。

「飲んだら乗らない」

「酒が完全に抜けるまでは運転はしない」

「自分は絶対飲酒運転はしない」

酒好きな人が100人いても99人ぐらいは当然のこととしてそのように思っていると思います。

私も今は酒をやめていますが、飲んでいた頃はそうでした。

飲酒運転をすると名前がニュースに出て仕事も解雇される世の中ですから。

しかし、酒に酔っているときに一刻を争うような緊急事態がもし重なって起きてしまうと、

「ほんのちょっとの距離だから運転しても大丈夫かも」

「もう酔いはさめたから大丈夫だろう」

酔って判断力が鈍った状態に焦りも重なり"雑"に間違った行動をしてしまう可能性を完全否定できる自信がありません。

以下のようなことが同時に重なると、この本に描かれている悲劇が誰にでもおきる可能性はあります。

・友達と飲み会に行く

・同じ日の夜にたまたま大切な恋人からどうしても今夜会いたいと言われる

・恋人を引き留めたい気持ちが収まらず、短距離なら大丈夫と思い込み酔ったまま車を運転してしまう。

・その飲酒運転で横断歩道を歩いていた年配女性を轢いて200mも引きずり死亡させてしまう

・怖くなってそのまま逃げてしまう

 

万一このような事件を実際に起こしてしまうと加害者として悔やんでも悔やみきれない日々が始まります。

「バカなやつだな」

「こんなやつ許せない」

ニュースを知った人の多くがそう思うでしょう。

しかし、どんなに後悔しても時間を巻き戻すことはできません。

頭ではわかっているこの飲酒運転の怖さを今一度誰もが認識すべきと思いました。

 

良い例えになってしまいますが、年末ジャンボ宝くじ1等の当選確率は1000万分の1ぐらいのきわめて低い確率です。

そんな低い確率でも買った人が大勢いれば世の中には当たる人がいます。

確率が極めて低いことであっても、起きるものは起きてしまうということです。

また、飲酒運転のような事件は、運転者の自業自得、自己責任であることに疑いの余地がないので加害者に同情する気にはなれません。

ましてや死亡事件ならどんな報いも当然であり、遺族が同じ目に合わせてやりたいと強く思うのも仕方ないと思います。

加害者は逮捕されると厳しい取り調べを受け、留置所、刑務所、出所後の苦しい世界を長年にわたって過ごします。

日々消えない後悔を背負い、なんとか踏ん張って生き耐え、長期にわたって制裁や償いに苦しみ続けるのです。

ニュースで事件を目にするだけの場合、そのことを直に感じ知ることがないので、

「とんでもないことを起こした奴」

「轢き逃げして認めないぐらいだからまったく反省もしていないのだろう」

厳しい目が向けられた状態から簡単には評価が変わらないのが現実社会なのかもしれません。

ましてや、ググれば昔の事件でも加害者の名前が分かってしまう世の中です。

家族や身近な人の支えがなければ、決して苦しい贖罪の日々は乗り切れるものではないでしょう。

この小説を読むと、ちょっとしたきっかけや悪い縁次第で自分も主人公と同じ運命をたどる可能性がゼロではなく、もしそうなってしまった場合の怖さを体感することができます。

「飲酒運転は絶対にしない」

「酒は危険なドラッグ」

そういう戒めを今一度強く感じたい人、

贖罪について深く考えたい人、

禁酒や断酒を継続させたい人、

そんな人に読む価値がある小説だと思いました。

 

ひとつ気に入らなかったのは、出所後も主人公がお酒を飲む場面があることです。

酒で人を殺めるような失敗をして真に贖罪の日々を過ごす人なら「一生お酒は飲まない」という決意をするはずです。

この本の著者にはそのような考えはなかったのでしょうか。

 

 

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「告解」の意味(ウィキペディアより)

キリスト教の幾つかの教派において、罪の赦しを得るのに必要な儀礼や、告白といった行為をいう。(出典:ウィキペディア

 

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